なんて清々しいタイトルなんだ!この本と初めて出会った時、タイトルに強く惹かれ、物語のあらすじすら読まずに購入していました。ー実は僕、このセリフ言ったことあるんです。(人のことをおまえ呼びしないポリシーなので、正確には〇〇じゃないとだめ、だった気がしますが。)最初は表題への好奇心で読み始めた本でしたが、たくさん共感できて、たくさん嫌なところ突いてくるな、と。その感想をまとめてみます。
Contents
『おまえじゃなきゃだめなんだ』あらすじについて
まず、はじめにあらすじをご紹介します。
ジュエリーショップで、婚約指輪を見つめるカップルたち。
親に結婚を反対されて現実を見始めた若い二人と、離婚を決めた大人の二人。それぞれの思いが形になる光景が胸に響く「消えない光」他23編。
人を好きになって味わう無敵の喜び、迷い、信頼と哀しみ、約束の先にあるもの
honto
―すべての大人に贈る宝石のような恋愛短編集。
短編小説よりもさらに短い、20~30代の男女を描いた23遍の超短編小説集です。
1編あたり10分程度で読むことができ、感情移入する前にストーリーが終わるので、「いい意味で」読後感少ない作品が続きます。
結婚指輪、結婚の形、好きの先にあるものー。
普遍的なテーマが、平凡な日常のストーリーとして描かれていますが、
芯を食う部分が非常に多く、一部抜粋にてご紹介します。
漠然と消えてしまいたいと思ったあのときに、見つめるものがあってよかったと思うのよ。見つめ返す強い光があってよかったって。だからね、結婚指輪は買いなさい。いつどんなふうにあんたたち夫婦を助けるか、わかんないから。
おまえじゃなきゃだめなんだ(原文)ー約束のジュエリー
幸せの形としての結婚指輪ー。
すごい素敵です。このセリフ、将来子供が結婚するときに絶対に言いたいと思いました。
愛には形がありませんが、その時の感情を形として残す。
綺麗な文章すぎて鳥肌が立ってしまいました。
若くて、経験もなく、楽観のかたまりで、好きだという気持ちだけで、何もかもうまくいくと信じていた無敵な時間を。もう二度とそこに戻ることができないけれど、そういうときが、たしかに自分にが、いや、自分たち二人にはあったと、指輪を見るたび思うのだった。
おまえじゃなきゃだめなんだ(原文)ー約束のジュエリー
上記の一文へのアンサー的なワンフレーズです。
結婚指輪だけではなく、恋人や友人からの大事なプレゼントにも当てはまるな、と。
プレゼントには、その時の感情をそのままに残す力があるのです。
あの大久保の一夜、日美子さんは、知り合いならどんなに薄い関係の人でも、とにかくつかまえて同じ話をしただろう。でも私は日美子さんが私だけに心の中を見せたと誤解して、そうして、ものすごい近しい距離にいた人と勘違いしたのだ。
おまえじゃなきゃだめなんだ(原文)ーすれ違う人
こういう経験って誰しもあるんじゃないかと思います。
恋人とうまくいってないから間に合わせにされた(もしくは、してしまった)ことや、好きでもない人と居心地の良さをだけを求めて関係性を続けてしまうことや。
別の小説でも、人は人を”間に合わせ”に使うという一文に出会ったことがありますが、受け入れることしかできません。
やや話が逸れましたが、
以下には特に心を打たれた表題作「おまえじゃなきゃだめなんだ」の感想文について書き連ねていきます。
『おまえじゃなきゃだめなんだ』アラサー男子の感想
それぞれの観点から、個人的なお話を含めて思ったことを書いていきます。
短編作品のあらすじは、貞操観念を持たず不誠実な20代を過ごしたヒロインが30代となった時、過去のあれこれを振り返りつつ、現実と向き合う話です。
おまえじゃなきゃだめ、なんてことある?
冒頭にて、「おまえ(〇〇)じゃなきゃだめ」と言ったことがあると書きました。
当時、遠距離恋愛をしていた恋人から別れを告げられた時、思わず口に出したと記憶しています。
あの時は本気で思っていたのかもしれません。
でも、時間が経ち、当時よりも仕事やプライベートがますます充実してくるようになると、
今なら絶対こんなこと(〇〇じゃなきゃだめ)言わないな、と改めて感じます。
冷静になって自分の周りを見てみると、
恋愛以外に、他に守りたいもの、やりたいこと、現在進行形で熱中していること、仕事を含む目の前のタスクがたくさんあることに気づいたからです。
「おまえじゃなきゃだめ」、当時の自分はそう言いました。言ったことには嘘偽りないと思います。
不思議なほどに、その瞬間は目の前しか見えてなくて、この人を失ってしまったら、自分は終わってしまうと本気で考えていたからです。
ーでも、人生に〇〇じゃなきゃだめなんてことはないと思います。
失ってしまったら、また探していけばいいと当時の自分に伝えてあげたい。今ならそう思います。
過去の不誠実は、自分に返ってくる?
作中に、「自分の過去の不誠実が、今こんな形の誠実となって返ってきた」という一文があり、
思わずうなってしまいました。
(僕自身、20代なのですが、他人に誇れるほど誠実な人生を歩んでいないので急な不安感に襲われました、、、)
過去に浮気しまくっていたから、浮気される、復讐される。そんな表面的な話ではないです。
内面的な話で、出来事や人とちゃんと向き合ってこなかった(逃げ続けていた)から、自分のことをおろそかにされるというか、気持ちいい方に逃げてしまう癖がついているというか。
過去の不誠実は「返ってくる」というか、自分の人生の「負債」になっていくんだなと感じます。
負債とは、気軽に寂しさを満たしてしまうとか、ただ居心地の良い関係性に逃げてしまうというような。
そうして、負債を返せないままアラサーになってしまうと、ここから先は自分の幸せの基準が下げながら生きていくしかないんだなと。
うどんに負けるヒロイン
作中で印象的な描写があります。
今まではコースのランチしか連れて行かれなかったヒロインが、
20代の時、初デートで1杯500円のうどんチェーンに連れて行かれたデートを回想し、
その時のデート相手の男が「やっぱ、山田のうどんじゃなきゃだめなんだよなあ」と言っていたことを、ふと思い出します。
自分は異性からモテていて、価値のある女だと思っていた(実際は、軽い女として見られていただけで、自分が執着した途端に男から逃げれてばかりだった)にも関わらず、
500円のうどんにすら勝てないという事実を突きつけられ、絶望します。
これは強い皮肉だなと感じました。
ただ、これが逃げ続けた人の末路なんだなと痛感しました。
まとめ
いかがだったでしょうか。『おまえじゃなきゃだめなんだ』はせいせいするほど痛快なストーリーであり、心を鷲掴みされるような、そんな感覚になります。
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また、角田光代さんの他のおすすめの小説は以下にて紹介しているので、合わせて読んでみてください!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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